遠のくデフレ脱却に危機感…「働き方改革」で日銀頼みを打破

 

 経済財政諮問会議が働き方改革を重視するのは、日銀の金融緩和策に頼るだけでは、いつまでもデフレから脱却できないとの危機感があるからだ。労働力人口の減少による生産性低下という構造的課題にメスを入れることで、限界ともささやかれる日銀の金融緩和頼みの状況を打破する構えだ。

 「経済界全体に賃上げの動きが広がり、デフレ脱却につながることを期待したい」。安倍晋三首相は会議で、こうあいさつした。

 首相は諮問会議の民間議員を務める新浪剛史サントリーホールディングス社長が、平成29年春闘で3%の賃上げを目指す考えを示したことも明らかにした。

 この日の会議で提示されたのは、働き方改革を通じて日本経済の生産性を高め、デフレ脱却へつなげるシナリオだ。生産性が上がり、企業の収益力が改善すれば賃上げが可能になり、従業員の消費意欲が増す。商品やサービスがよく売れるので企業は値上げに踏み切り、物価全体が上昇してデフレ脱却につながる。

 民間議員はこのシナリオを通じ、日銀が掲げる「物価上昇目標2%」を目指すべきだとした。

 石原伸晃経済再生担当相は会合後の会見で「(議論の方向性の転換というふうに)強く感じた」と感想を述べた。

 今回の諮問会議は、日銀が9月21日の金融政策決定会合で新しい金融政策の枠組みを決めて以降、初めての開催となる。

 このタイミングで日銀と連携する必要性を改めて訴えたのは「しつこいデフレ」(民間議員)が続く中、日銀の大胆な金融緩和に政府側の取り組みが追いついていないという認識があるからだ。

 今回強調された働き方改革についても、脱時間給制度や解雇の金銭解決導入など、より抜本的な改革が先送りされているとの批判もある。

 取り組みを加速し、一刻も早くデフレ脱却に道筋をつけなければ、政権が目指す名目国内総生産(GDP)600兆円も夢物語に終わりかねない。(山口暢彦)