ドローン19年宅配実用化へ 千葉市舞台に「空の産業革命」第一歩
荷物を積んだ小型無人機「ドローン」がマンションのベランダに次々着陸-。千葉市と国、大手企業などが、高層マンションの立ち並ぶ同市美浜区の幕張新都心を舞台に、ドローン宅配を2019年ごろに実用化する検討を本格化させている。安全面やコストなど課題は残るが、関係者は「『空の産業革命』の第一歩」と意気込んでいる。
20年の東京五輪・パラリンピックも見据え「未来型の町づくりをリードし世界にPRしたい」と、千葉市の熊谷俊人市長(38)が力を込める計画はこうだ。
千葉県市川市の湾岸にある倉庫から、翼を備えた全長2.4メートルの機体が海上を経由し荷物を輸送。約10キロ先の幕張で小型の機体に積み替え、マンションのベランダに届ける。機体は事前に設定した経路を自動で飛ぶ。
市は今年1月に国から国家戦略特区の指定を受け、都市部では規制されているドローンの飛行が可能になった。4月の初実験では、ワインボトルを積んだ機体が小雨と風の中、商業施設と隣の公園を往復した。6月からは月1回、千葉市と内閣府、企業による検討会を開催。国内のドローン開発の第一人者で、検討会座長を務める千葉大特別教授の野波健蔵氏(67)は会合で「何百、何千もの機体が飛び交う時代を想定している」と展望を語った。今秋には再び実験を予定している。
検討会に参加するITや流通などの企業約15社も本腰を入れる。役割分担もおおむね決まった。気象予報会社「ウェザーニューズ」(千葉市)が、ドローンが飛ぶ超低空の天候把握を担当、NECとNTTドコモが管制や運航管理を受け持つ。
ただ、安全面への心配はある。ドローン宅配の実験は山間地の秋田県仙北市などでも行われているが、幕張ほどの人口密集地では他に例がない。子育て世代の住民からは「幼稚園や小学校に落ちないか不安だ」との声が上がる。熊谷市長は「安全第一は当然。飛行実験の枠組みに地域住民も加わってもらい、一歩一歩進める」と強調する。
コストや技術の面で課題も。流通大手イオンが「輸送コストや保険費用を検証する必要がある」と会合で指摘。携帯電波網を活用したドローンの飛行制御が実現できるかなど、技術面の向上もスピードが求められる。
ドローンは、これまで活用されなかった高度数百メートル以下の空間を生かすため、「空の産業革命」の担い手として期待される。野波氏は「宅配はその第一歩」と強調する。最終目標は、マニピュレーター(腕)を備え、複雑な作業を自動でこなす「空飛ぶロボット」の開発だ。
野波氏が代表の千葉大発ベンチャー企業「自律制御システム研究所」は、国内約220の企業や東北大、信州大などの研究室と技術開発に取り組む。野波氏は「50年ごろには町中で見られるようになるだろう」と話している。
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