上海ディズニー「レストランの庭にオシッコ」…トホホ続きの“夢と魔法の国”
「昼食を食べていたら、すぐ近くの席の大人2人が小さな子供を抱え、レストランの庭に向けてオシッコさせていた」。上海ディズニーランド開園初日の16日、中国版のツイッター「微博(ウェイボ)」に投稿された画像と記事が、瞬く間にあちこちに転載されていく。
微博で多数のフォロワーをもつ上海の宣克霊さんの投稿。上海ディズニーの一番奥にある肉料理レストラン「老藤樹食桟」での出来事という。すぐ外にトイレがあるにもかかわらず、子供はガマンしきれなかったようだ。中国ではなお、街中でもよく見かける光景のひとつだが、「夢と魔法の国」では見たくない“トホホ”な親子の姿である。
一人っ子政策が35年も続いた中国の都市部では、一人っ子の子供を両親とそのまた両親の合計6人の大人が、かかりっきりで甘やかすケースがなお多い。「小皇帝」と呼ばれる子供のするいたずらなら無関係な人でも許す、または許さざるを得ないため、「人さまに決してご迷惑をかけてはならない」との教育は皆無といっていい。親の世代からして一人っ子だからだ。
ディズニーランドではないが、香港の路上で子供にオシッコをさせていた中国本土からの家族連れを香港人が注意したところ、その親が「何が悪いんだ!おまえの子供はオシッコしないのか!」と逆ギレしてきたという。そのとき撮影されたビデオ映像がネット上に流れて、香港で反中感情に火がついたことがある。
園内にレストランは屋台風のものも含め30カ所以上あるが、「高くてまずいし待たされる」(安徽省合肥から来た30代の女性)と評判はさんざんだ。中国人にとっては珍しい七面鳥の足のグリルは屋台風の持ち帰り店で1本55元(約900円)。子供向けの小さなピザは冷凍品をチンしただけで60元(約1000円)もする。親子連れで食べていた子供にこのピザの感想をきいたところ、一言「まずい!」とかえってきた。
16日に一般向けに正式開園した上海ディズニーランド。5月7日から始まった試験営業でも、ごみのポイ捨てや園内での喫煙、落書きなど、入園者のトラブル続きだった。とはいえ「試験営業時は上海市内の都市部に住む関係者が大半だったが、この先の一般営業では地方の農村部などからも数多く来れば、もっと大変なことが起きる」と上海当局者は気をもんでいる。
だが、入園者だけが問題なのではなさそうだ。初日の16日は正午(日本時間午後1時)から一般の入場が始まったが、午後1時ごろ入場しようとした人が、ゲートを通って園内に入るまで2時間以上も並ばされる事態になった。気分が悪くなった女性や子供たちが倒れたり、割り込みが起きてあちこちで口論や小づきあいが起きたが、問題は荷物検査に加えて、中国人が所持している身分証明書をチェックする装置と、それを操作する係員にあった。
米国から導入されたとみられる英語表示のチェック装置で、採用されたばかりの新人係員らが必死に1人1人の身分証をチェックしていくが、そのスピードがあまりに遅く、ゲートを通り抜ける人の列は牛歩のごとく。東京ディズニーランドなどではアトラクションで並ばされることはあっても、入場ゲートで2時間も待たされることはない。
正午の開園で2時間待たされ、場内に入ってなおアトラクションで1時間、2時間待ち。日没までに2つか3つのアトラクションを楽しむのがやっとの初日だった。ただ、使い勝手がよかったのは、公式アプリでスマホに各アトラクションの待ち時間がリアルタイムで表示されたこと。スマホを手に、少しでも列の短いアトラクションに向かって走る入園者がめだった。
米ディズニーは上海での開園にあたって、中国風アトラクションが集客の鍵とみている。パレードには中国の伝統をもとに映画化された「ムーラン」の主人公も登場。アニメ映画「ターザン」がテーマのショーでは、中国の雑技で行われるアクロバティックなジャンプや、皿回しの芸が取り入れられた。いわば、もみ手で中国人の自尊心をくすぐる演出が、そこかしこににじみ出ていたといえる。
東京(所在地は千葉県浦安市)のほか米フロリダ州やカリフォルニア州、さらにフランスのパリのディズニーで家族や恋人、友人らと楽しい、懐かしい思い出をもつ人は、よほどの覚悟と「ここは別物」との考えをもってかからない限り満足感を得ることは難しいかもしれない。上海が世界の水準に1日でも早く追いつくよう入園者もスタッフも頑張っていただきたい。(上海 河崎真澄)
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