アベノミクスにダブルパンチ、月例経済報告で個人消費と企業収益に陰り
内閣府は3月の月例経済報告で、景気判断を5カ月ぶりに下方修正した。中国経済の失速や金融市場の混乱で、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費の低迷が一層浮き彫りになり、企業の収益環境にも陰りが生じているためだ。景気の下ぶれリスクが強まっており、企業業績の向上と消費拡大の好循環で経済成長を目指すアベノミクスに暗雲が漂い始めた。(山口暢彦)
石原伸晃経済再生担当相は会見で「株価や外国為替相場の変動が消費マインドに悪影響を与えている」としつつ、「雇用や所得環境の改善傾向は続き、ファンダメンタルズ(経済の基礎的条件)に大きな変化はない」と強調した。
今回の月例報告では、平成26年4月の消費税率8%への増税をきっかけとした個人消費の低迷が、依然として長引いていることが浮き彫りになった。
最近公表された統計でも実質消費支出の前年割れが続き、2月の消費者態度指数や景気ウオッチャー調査は基調判断が下方修正された。
耐久消費財の販売も伸びず、2月の国内新車販売台数(軽自動車を含む)は、14カ月連続で前年割れとなった。
さらに今回は、頼みの企業部門にも弱さが目立ち始めた。企業収益の判断を引き下げたのは、昨年10~12月期の法人企業統計で、製造業の経常利益が前年同期比21・2%減と落ち込んだことが大きい。
内需を支える家計部門と企業部門の失速で、景気の「足踏み感」が強まってきたとの見方が市場では強まっている。第一生命経済研究所の藤代宏一主任エコノミストは「1~3月期の実質GDPが、2四半期連続のマイナス成長になる可能性が高まってきた」と指摘する。
景気停滞の長期化は安倍晋三首相の消費税率10%への増税判断に影響しかねず、石原担当相は増税のため「個人消費が明るくなるような政策が必要だ」と述べた。
一方、安倍首相は、増税延期の条件として「世界経済の大幅な収縮」を掲げており、今月始まった「国際金融経済分析会合」などを通じて、世界経済の減速が国内景気に与える影響を慎重に検証していく。
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