ただ農家や業界団体からは、こうした分析が楽観的ではないかとの声も上がる。TPP交渉中には農産物の保護を求める生産者団体の集会が頻繁に開かれていたが、大筋合意後も農水省の説明会などで将来の経営を不安視する声は相次いでいる。
一方、政府は農産品の輸出を強化したい考えだ。TPPでは日本以外の国も市場を開放する。米国が日本産の牛肉の関税を15年目に撤廃し、それまでの間は現在の輸出実績の20~40倍に相当する数量の無関税枠を設ける。ベトナムは日本から輸入したブリやサンマ、サバといった全ての生鮮魚、冷凍魚で関税をすぐになくす。
協定案では、日本が米国など5カ国との間で、協定発効から7年後に相手国からの要請で関税撤廃方式などを協議すると規定した。日本政府は「必ずしも相手の要求を受け入れるわけではない」との認識だが、農産物のさらなる開放を求められる可能性も残る。
工業部門は繊維などの関税が撤廃されるが、関税が残っている品目は既に少なく、TPPで競争が激化する国内生産者は一定程度にとどまる見通しだ。(SANKEI EXPRESS)