「財務省が持ってくる文書には、消費税を10%より上げようとする狙いが見え見えなんだよ」
安倍晋三首相(60)は今春、周辺にこう述べ、財政健全化を名目に消費税率を10%よりもさらに引き上げようと画策する財務省に不快感を示した。財務省がさまざまな政府文書に消費税率10%超の可能性を生じさせる文言を盛り込ませようとしていることに、首相は神経をとがらせている。
財務省にくぎ
政府は、国と地方の基礎的財政収支(プライマリーバランス、PB)を2020年度に黒字化する目標を掲げている。今年2月発表の内閣府の試算によると、アベノミクスによる景気回復や消費税率の8%への引き上げで、15年度にPB赤字の対国内総生産(GDP)比率を10年度から半減させる目標は達成できる見通しが立った。だが、20年度のPB黒字化に向けては、17年4月の消費税率10%引き上げを前提に、成長率を名目3%以上の高めに設定しても、9.4兆円の赤字が残るとの結果が出た。
9.4兆円の赤字を埋めるには、経済成長による税収増、社会保障費などの歳出削減、増税による歳入増の3つが考えられる。「9.4兆円」の試算はすでに高成長を見込んでいることもあり、財務省がもくろむのが、消費税率を10%よりもさらに引き上げる案だ。