【国際情勢分析】
「人類が政治的ご都合主義による蛮行によっておとしめられた」。4月29日付豪紙シドニー・モーニング・ヘラルド(電子版)社説は、こんな見出しを掲げて、29日午前0時25分にインドネシアで執行された死刑を非難した。
銃殺刑に処せられた死刑囚は、薬物密輸などで死刑が確定していたオーストラリア人2人を含む外国人7人とインドネシア人1人。オーストラリアのトニー・アボット首相(57)が再三にわたり、インドネシアに死刑を執行しないよう訴えてきたが、インドネシアのジョコ・ウィドド大統領(53)は処刑に踏み切った。これを受け、アボット氏は抗議のため、駐インドネシア豪大使を召還した。
薬物密輸などで8人処刑
シドニー・モーニング・ヘラルドの社説は、インドネシア政府、とりわけジョコ氏が8人の処刑に関して「非難される立場にある」として、司法手続きの不備、死刑執行の方法、そしてジョコ氏が慈悲と思いやりという「人間として最も基本的な対応を示すことができなかった」ことの3点を挙げた。インドネシアが「多くの政治犯を殺害する中国や殺人犯を死刑にする米国と変わらない」とも毒づく。豪州は約30年前に全土で死刑制度が廃止されている。