天草出身の柿久さんは県外で働いていたが、父親が倒れてUターン。「好きな映画の仕事をしたい」と映画祭を企画し、高倉健や宮沢りえなど著名俳優も招いた。「劇場で映画の楽しみを味わってほしい」と、閉鎖されていた映画館を譲り受け、1998年に再開。自ら選んだ名画や新作を上映しているが、普段の客は一日に数人かゼロという。
「いつか満席にしたい」という柿久さんの願いを小山さんがかなえた。「試写会のロケをする」とだけ伝えていた。「これからも人生を豊かにする映画を探したい」と、上映後にあいさつする柿久さんや、そばで涙ぐむ妻の敬子さん(49)。一連の風景はそのまま撮影され、作品のラストシーンとなる。
「ふるさとで、ずっと。」は熊本県の観光PRフィルムとして2011年に発表された「くまもとで、まってる。」の続編で約15分。制作費は約800万円で、前作に続き小山さんが企画、脚本、監督を担当した。観光PRだけではなく、何げない日常で紡がれていく人生の素晴らしさを伝える狙いがあり、その目線は限りなく優しい。小山さんは「見た後でちょっと幸せな気分になれて、幸せは身近なところにあると感じてもらえればうれしい」と話す。