「叔父の影響もあって、指で弾くことで可能な多様な表現を探求しているわ。さらにギターから出した音をいろいろ加工していくうちに、音がモンスターのようなキャラクターを持ってできあがっていく。アプローチとして私は単なるノイズメーカーでしかなく、ギターらしい音を出すことに全くこだわっていないの(笑)」
特に最新アルバム「セイント・ヴィンセント」は、「有機的なもの、つまり人間が弾いている音楽というものをいかに無機質な音にするか。鏡の向こう側を通して音楽を人間的ではないものにすること」がテーマだったそう。それゆえ「バース・イン・リヴァース」はギターで普通に作ったらありがちな曲になるからと、「自分自身の耳や脳、指をだますために、あえて変なチューニングにすることで、自分の慣れや弾き癖でギターを演奏しても違う結果が出てくるようにしたの。いろいろ試しながら作った曲よ」と話す。まるで実験のような作曲法だ。
「自分にとって曲作りとは、自分の知識と直感的に出てくるもの全てを歌という楽曲の形の中に共存させること。それらは必ずしもとても融合しているわけではないけれど、自分にとっては大きな発想を一番完璧にする表現形態で、その発想を伝える上での小さな媒介なの」