しかし、中国が法の施行主体であるから不気味なのであって、危機に備える安全保障体制自体が欠落するわが国は学習の必要があろう。例えば、国防動員法はヒト・モノ・カネを統制・徴用。《交通・運輸/郵政/電信/医薬・衛生/食品・食糧供給/建設/エネルギー・化学工学/水利/民生用原子力/メディア/国防用の研究・生産などの関連組織は、国防勤務を担わなければならない=第51条》とある。一党独裁の強制力とはいえ、羨ましい限り。
一方、この条文と前述の免除規定と併せ読むと、中国内の日本人も適用範囲に入る。人民解放軍高官は「国防動員法が発令されれば、外資や合弁会社にも適用される」と言い切っている。従わなければ、中国人同様に罰則を科せられるはずだ。
日本人はそれでも、中国市場にしがみつく。誘拐・監禁事件で、犯人と長時間過ごした被害者が犯人に次第に魅せられていく《ストックホルム症候群》を発症したかのように。逆に、監禁者が被監禁者に親近感を持ち、攻撃的姿勢を和らげるパターンを《リマ症候群》と呼ぶ。
言っておくが、中国はリマ症候群を患うほどヤワではない。(政治部専門委員 野口裕之/SANKEI EXPRESS)