地方財政への飛び火懸念
ただ、かつて日本が経験した不動産バブル崩壊の前夜とは、どうも様子が違う。スタンダード・アンド・プアーズでは、「価格下落に伴って今年の住宅販売件数は後半に上向いて、むしろ通年では前年比10%の増加」を予想している。住宅価格は下がるものの、手ごろ感から売買は活性化して、暴落やバブル崩壊は起きないというのだ。
郁氏の発言もこの見方に近い。「黄金時代の終焉(しゅうえん)」はすなわち、投機や投資の対象として売買が繰り返された不動産の市場価格形成パターンが限界に達し、自分や家族が暮らす「実需」としての住宅市場に落ち着くとみている。
不動産市況が混乱なく、需給に基づく相場にソフトランディング(軟着陸)することは、中国マクロ経済の安定にとっても喜ばしいことだ。ただ、それでは困る面々もいる。中国では地方財政の大きな部分を政府による不動産開発が支えている。安価に収用した農地に鉄道や道路などのインフラを整備。その周辺の不動産を高値転売するという“錬金術”にも似た手法で財源を確保してきた。市況高騰を見越した投資が一部で返済不能に陥る懸念がある。