ベトナムで戦い、陸軍参謀総長としてイラク、アフガン戦争に関わった2つの世代にとっての「英雄」であるシンセキ氏は、退役軍人への医療サービスや生活支援に関わる退役軍人省のトップに適任だった。だが、退役軍人病院での不祥事は皮肉にも、この「2つの世代」によってもたらされた。
増大する「戦後」負担
1975年に終結したベトナム戦争世代は約2000万人の退役軍人のうち3分の1に当たる730万人を占める最大勢力だ。彼らはちょうど初老にさしかかり、医療がより必要になる。そこにイラクやアフガンで障害を負った帰還兵が加わり、退役軍人省が運営する医療関連サービスの利用者はここ5年間で約200万人も増えた。
状況を改善するため、退役軍人省は診察待ち時間を減らした施設の幹部に特別ボーナスを支給するようにしたが、これがあだとなった。本省に偽の待機者名簿を提出し、実際は数カ月も患者を待たせるような事案が発生してしまったのだ。
「戦場では20歳がらみの伍長の電話だけを頼りに攻撃を命じなければならない。それが良い情報だと信じるしかない」