世界規模の米軍再編(トランスフォーメーション)を進めていた当時のドナルド・ラムズフェルド国防長官(81)は、ハイテク化された少数兵力による効率的な作戦を志向していた。文民統制を受ける立場にも関わらず異を唱えたシンセキ氏は、ラムズフェルド氏によって解任される。
イラク戦争が思うように進まなかったことで、退役後は軍の中枢部からもシンセキ氏の主張が正しかったとする声が上がった。上院議員時代からこの戦争に反対してきたオバマ氏は、このいきさつに注目した。
2つの戦争世代
「シンセキ氏は権力に対して真実を述べることを、決して恐れてこなかった」
オバマ氏は5月30日、シンセキ氏の更迭後、ホワイトハウスで開いた緊急の記者会見でこう語った。「権力」がラムズフェルド氏を含めたブッシュ政権を指すことは疑いがない。
オバマ氏は、ブッシュ政権の末期に2007年に発覚したウォルター・リード陸軍病院での不祥事を08年大統領選で利用した。イラク、アフガニスタンの帰還兵が劣悪な環境で治療を受けていた問題の解決を約束することで退役軍人の支持を得たのだ。