加藤和彦といえば、古くはザ・フォーク・クルセダーズや、イギリスツアーも行ったサディスティック・ミカ・バンドでの功績もあるが、ソロ、プロデューサーとしての活動も素晴らしかった。しかも食通で旅の達人であり、ファッショニスタでもあり、アートなどの知識も豊富な文化人として知られていて、多彩なエッセンスや美意識も音楽に反映されていた。さらにウイットにあふれた作詞家・安井かずみとの夫婦像は、本当にすてきだった。私は雑誌編集者時代にバミューダ諸島への取材でご一緒したのだが、ちょっとした会話からも学ぶことばかりだった。
YMOも参加した
その2人が1979年から81年にかけてバハマ・ベルリン・パリと赴き、現地の空気感を音楽に取り入れるようにして制作したのが《ヨーロッパ3部作》と呼ばれるアルバム。それらが30年の時を経て復刻された。YMO、大瀧詠一、山下達郎などがチャートを席巻していた時代に、加藤に招かれて坂本龍一、高橋幸宏、小原礼、大村憲司らがバハマへ渡り、ローリング・ストーンズやボブ・マーリーらが使用していたスタジオで『パパ・ヘミングウェイ』をレコーディング。ベルリン録音の『うたかたのオペラ』はデヴィッド・ボウイ&ブライアン・イーノが使用したスタジオで、細野晴臣や矢野顕子も参加。