【京都うまいものめぐり】
聖護院(京都市左京区)といえばお寺としてよりも、大根や蕪(かぶら)など京の伝統野菜発祥の地として有名かもしれない。そこにひっそりとたたずむ京人(きょうと)料理「鴨弘(かもひろ)」は、鴨鍋のお店として人気がある。3月に入ったとはいえ、まだまだしんしんと冷える古都の底冷え。お鍋で身も心もほっこりと温まって、本格的な春の訪れを待ってみてはいかがだろうか。
「朝びき」のみ使用
鴨川から東へ、琵琶湖の第2疎水をせき止めた夷川ダムに沿って数分歩くと、真っ白いタイルの建物が見えてくる。「鴨弘」と染め抜かれたのれんをくぐって、木の引き戸をガラガラと開ける。カウンター7席と座敷1つというこぢんまりとして家庭的な雰囲気が漂う。
「鴨鍋をメーンにしていますが、うちは鍋屋ではなく、割烹(かっぽう)料理の店なんです。和食や割烹料理というと、有名な店が軒を連ねる京都の先輩方になんだか申し訳ない気がして。26年前に独立したとき、店の顔となるような料理がないかと考え、思いついたのが鴨鍋でした」とご主人の青木弘さん。