俳優女優の取材には、たいてい事務所の誰かが付き添ってくるが、西田尚美(43)はインタビュー場所となる劇場ロビーに、1人でふらりとやってきた。鏡を数秒、のぞいただけで、そのまま写真撮影がスタート。飾らない人柄や、会話の端々で見せる笑顔に、つい引き込まれそうになった。
ポジティブな情念を
そんな西田が今、シアタートラム(東京)で上演中の3部作形式の舞台「花子について」(作・演出、倉持裕)で、異色のファンタジー作「班女(はんじょ)」に出ている。演じるのは、3年もの間、愛する吉雄(近藤公園)の迎えを待ち続ける女性、花子だ。「苦もなく、ただいつか会えるという希望を信じて待ち続ける花子のポジティブな情念を見せたい」と意気込む。
待ち続ける間、吉雄と交換した扇子を肌身離さない花子は愛らしい。だがその待ち方が、かなり変わっている。
朝から晩まで、扇子を持ってタクシー乗り場に立ち、乗客の列の中に吉雄の姿を探すという、狂気じみた日課をただ繰り返してきた。タクシー乗り場で会うなんて約束はしてもいないうえ、吉雄がシリアに行ったとか、大けがをしただとか、会えない理由を勝手に妄想しているフシもある。