米の人気劇作家、デイヴィッド・マメットの戯曲「クリプトグラム」は、どんな家庭にも潜む「言葉にされない」ほころびを、日常会話の重なりから、次第に明らかにしていく試みでもある。米NYのアクターズスタジオ大学院を出た気鋭の演出家、小川絵梨子(35)が繊細な会話をこなれた日本語でひもとき、11月24日までシアタートラム(東京)で上演中だ。
登場人物は3人。ドニー(安田成美、46)と10歳の息子ジョン(坂口湧久、山田瑛瑠のWキャスト)、それに谷原章介(41)が演じるデル。
「劇中、語られないことや、言外ににおわされるけれど答えが明示されないことなどが積み重なって、不安が増幅していく感じ。ピントを合わせて演じようとするけれど、ストーリーの中に解がない。それが解だといいますか…」と谷原。演じる当の本人なのに、不安や戸惑いを隠さない。
不透明さこそ「日常そのもの」
物語はジョンが夜眠れずにいるシーンから始まる。明日はキャンプに行くというのに、父親が帰ってこない。リビングに両親の友人デルがいる。ジョンは胸騒ぎを覚える。