おじいちゃんからは「言い残しておきたいことがあるからカセットテープレコーダーを持ってこい」と言われたことがあります。私は絶対におじいちゃんは死なないと思ったから持っていかなかったんですよ。カセットテープレコーダーを持っていかなければ死なないとも思いました。でも、おじいちゃんは死んじゃって、言い残したいことを残せなかったんですね。
その後、私は大人になってから映画と出会って、おばあちゃんを題材とした映画(1994年、ドキュメンタリー『かたつもり』、山形国際ドキュメンタリー映画祭奨励賞受賞)を撮ったんですよ。おばあちゃんの映像は残そうと思いましてね。死が前提ではなくて今を切り取ろうとしました。
正直に言うと、私が「2つ目の窓」を映画にしたくなったのは、私がこの映画を撮りたかったからというよりは、おばあちゃんとおじいちゃんが背中を押してくれたからではないか…。そんな気がしているんですよ。「しっかりと後の世代に大切なものを伝えていきなさい」とね。(取材・構成:高橋天地(たかくに)、津川綾子/撮影:野村成次、写真家 別府亮/SANKEI EXPRESS)