≪いのちの隣に、いつも暮らす≫
奄美大島出身の歌手、元(はじめ)ちとせ(34)は、2009年から家族で故郷に戻り、暮らしている。帰郷は第二子となる長男(4)の妊娠がきっかけだった。この地の暮らしの中にある豊かさとは何か-。奄美大島に根をおろして暮らす、元ちとせを訪ねた。
命のこと、もっといえば「失う」ことを、私は身近に感じて育ちました。
私が18歳になるまで暮らしたのは、総勢50人ほどの小さな集落。小学校時代には私を含めて児童が4人しかいませんでした。もちろん当時もスーパーマーケットはありました。けれど、かわいがって飼っていたヤギを捌(さば)いていただく、ということもしょっちゅうでした。おじちゃんがヤギをさばくのを見て育ちました。でも小さかった私が泣いたり、わめいたりしたのは2回くらい。子供ながらに、命をいただくということはとても大切なことで、「簡単なものじゃない」ということがわかりました。