「不安(fear)」や「恐怖(terror)」、「暴力(violence)」に対するメディアのヒーリング効果について研究したジーナ・ロスは、その著書『トラウマを超えて』(2003年発刊)で、トラウマが個人から集団のものになり、ひいてはそれが多くの紛争や戦争が続く原因になっていると指摘。その連鎖を防ぐためにメディアが果たすべき役割について提起した。
このことは、現在の日中韓の緊張関係にもあてはまる。昨年(2013年)の紅白で、平和への思いを込めた「ふるさとの空の下に」を熱唱した美輪明宏さんが、「100人の政治家よりも偉大な文化人の交流のほうが世界平和に役立つ」と言っていた。現在のお茶の間向け番組の少なからずが、テレビの役割を軽視しているか、気づかずに視聴率の「高低」だけに「拘泥」しているが、その悪循環から脱することができれば、テレビは自力で復権できる。(同志社大学社会学部教授 渡辺武達(わたなべ・たけさと)/SANKEI EXPRESS)