その展開がまたいいのです。正直なところ、登場人物が多いとお気に入りの1人2人が固定化されてしまう場合がありますが、この物語は10人誰にスポットが当たっても、弱くなる部分がありません。繰り返しますが、それほど人物造形がしっかりと練り込まれているのです。10人全員に応援の言葉を心の中で投げかけながら、私はページをめくりました。
スポーツは筋書きのないドラマとよく言われ、今回90回を迎える箱根駅伝も、どんな結末が待っているかわかりません。だからこそ、楽しみに面白くテレビの前から動かず見てしまうのですが、小説の中には、結末を知っていても、どんな展開が待っているかわかっていても、ここで誰がなんというか全部記憶していても、何度でも読み返してしまう、好きでたまらない作品があります。