戸籍訂正を認めた3人は特例法で結婚が認められた夫婦の間の子には通常の夫婦と同様、法律婚の「主要な効果」である嫡出推定が適用されると判断。寺田逸郎(てらだ・いつろう)裁判官は補足意見で「血縁関係上の子を作ることができない男女に特例で結婚を認めた以上、血縁がないという理由で法律上の父子関係を否定することはない」との解釈を示した。一方、反対意見の岡部喜代子裁判官らは「特例法は親子関係の成否に触れていない」と特例法の効果を限定的に解釈した。
法務省によると、今回の決定の当事者と同様に、性別変更をした男性の妻が実際に出産したケースは、これまで39件を確認。その意味で決定が及ぼす直接的な影響は限定的とも言えるが、2004年以降、性別変更を認められた人だけで3500人超に上る。法曹関係者の一人は「父子関係が認められないことを理由に、子を持つか悩んでいるカップルに影響が広がる可能性がある」とみる。
だが、大谷裁判長は反対意見で、今回のようなケースで父子関係を認めれば「現在の民法の解釈の枠組みを一歩踏み出すことになる」と指摘。さらに「本来的には立法で解決されるべき問題に、制度整備もないまま踏み込むことになる」と述べたように、議論が尽くされたとは言い難い。