性同一性障害特例法に基づき戸籍上の性別を女性から変更した男性(31)と、第三者の精子を使った人工授精で妻(31)が産んだ長男(4)との間に法律上の父子関係を認めるかが争われた家事審判の抗告審で、最高裁第3小法廷(大谷剛彦(たけひこ)裁判長)は「特例法で性別変更した男性は、夫として結婚できるだけでなく、婚姻中に妻が妊娠した子と法律上の父子関係があると推定される」との初判断を示し、長男の戸籍の父親欄に、男性の名前を記載するよう命じた。
決定は12月10日付で、5人の裁判官のうち3人の多数意見。性同一性障害をめぐる父子関係について最高裁が判断するのは初めて。家族の在り方についての議論に影響を与えそうだ。
民法772条は法律婚の夫婦について、「妻が婚姻中に懐胎した子は、夫の子(嫡出子)と推定する」と規定している。
決定によると、男性は特例法に基づく性別変更後の2008年4月に妻と結婚。妻は第三者の精子提供を受け、09年11月に長男を出産した。男性らは長男の出生届を東京都新宿区に提出したが、区が戸籍の父親欄を空欄にしたため、男性らが戸籍の訂正を求めていた。