ようやくの興奮がスタンドを包んだのは、終了間際の攻防だった。オールブラックスをゴール前にくぎ付けにし、ホーンが鳴って最後のワンプレーとなってからも、ペナルティーを受けながら速攻を繰り返した。PからGO。興奮最高潮のバックスタンドの前で、左展開から左WTB福岡堅樹がタッチライン際を駆け抜けた。ボールはインゴールへ。体は外へ。福岡を弾き出したのは主将リッチー・マコウの強烈なタックルだった。勝敗はとうに決しているのに闘将は一つのトライも許さない。
主審がビデオ判定を求めた。会場のスクリーンに角度を変えた「トライシーン」が何度も映し出される。その度、スタンドに歓声とため息が交錯する。ボールがインゴールに着地する直前、福岡の体がコーナーフラッグのポールをたわませていた。タッチラインを割ったとの判定は、そのままノーサイドの笛となった。
2万の興奮、2万の落胆。これを2019年の日本W杯につなげなくてはならない。ただ同時刻、隣の国立競技場ではJリーグ・ヤマザキナビスコカップの決勝が行われていた。柏-浦和の関東カードに、4万6675人の観衆。ラグビー界の最高カードが国立で行われていたら、どれだけ入ったろう。その答えも見てみたかった。(EX編集部/撮影:山田俊介、中井誠/SANKEI EXPRESS)