そこまでだった。ハイボールの処理のミスを突かれ、外でボールを回され、次第にトライを重ねられた。カーターの左足も健在で、楕円(だえん)球が次々ゴールポストに消えていった。見せ場は終了間際、オールブラックス側ゴールライン目前の攻防だったが、ジャパンのトライは遠かった。
6-54。オールブラックスを相手に54失点、48点差はいずれも過去最少だったが、善戦とはいえない。病床のエディ・ジョーンズは「最初の20分はよかった。世界のトップ10に勝つためには、同じことを50分間続けなくてはいけない」とコメントした。
145点を取られた95年W杯の後は、もうラグビーなんて見る気もしない、と思った。だがこの日、秩父宮を後にする観客は「興奮した」「ちゃんと戦った」と半ば満足げだった。選手らも口々に手応えを語った。そこが18年前と、大きく違う。意識の変化を形にするために、勝利がほしい。欧州遠征で戦う9日のスコットランド戦は何が何でも結果をもぎとってほしい。
≪興奮と落胆交錯 無情のノートライ判定≫
11月2日の秩父宮ラグビー場は、あいにくの小雨交じりの天候だったが、2万454人の観客がスタンドを埋めた。前売り券は売り出し初日に即日完売していた。