働き方改革進む欧州の実態 残業少なく家庭と両立支援 (4/5ページ)

2016.10.17 05:00

仕事を終えて帰宅する人などで混み合うヘルシンキ中央駅=6月(共同)
仕事を終えて帰宅する人などで混み合うヘルシンキ中央駅=6月(共同)【拡大】

  • 育児休業を取得したアレクシ・リンタ・カウッピラさん。妻のエイラさんと長女のミイナちゃん=6月、ヘルシンキ(共同)
  • 週3日のパートタイムで働くレイニエル・ファン・ドゥ・ブリーさん=6月、オランダ・ユトレヒト
  • オランダ第4の都市のユトレヒト市街地=6月

 「それは差別みたいですね」。「オランダ労働組合連盟」の幹部、コーエン・ファン・デル・ビールさんは日本の待遇格差にいぶかしげだ。

 オランダでは1980年代からパートタイムが増えた。当時の深刻な経済不況の下、失業者を減らすため、仕事を分け合うワークシェアリングを進めた経緯があるが、労働環境も改善されてきた。96年には、フルタイムで働く人との賃金や社会保険、昇進といった労働条件の待遇差が禁じられた。

 日本のパート労働法にも同様の規定はあるが、対象者の範囲が狭く定着していない。

 さらにオランダでは2000年から、労働者に働く時間を短縮・延長できる権利が法律で保障され、柔軟な働き方を後押しする。子育てに積極的で一時的にパートに切り替える男性も増えているという。

 ◆副業もOK

 こうした環境の違いが、年間の平均労働時間の大きな差を生んでいる。オランダの平均は1347時間で、日本の1741時間より約400時間も短い。

 副業が広く認められていることも柔軟な働き方に一役買っているようだ。週3日勤務のブリーさんも、年に何回かは記者業をして「趣味に使う程度」の稼ぎを得ているという。日本では一部の企業で認める動きはあるが一般的ではない。

 千葉大の水島治郎教授(オランダ現代政治)によると、労働組合が1980年代以降、存続に向けた戦略の下、積極的に女性やパートタイムで働く人の待遇改善を訴えてきたという。日本では、転勤や無制限な残業といった責任を担わされる男性中心の正社員モデルを見直す必要があると指摘する。「同一労働同一賃金を進めるには抽象的に議論しても意味がない。まずは長時間労働を是正し、仕事の役割を明確にした上で、均等待遇を担保していくべきだ」

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