◆「父親休業」8割
そんな中、経済の低迷を理由に大きな見直しが進んでいる。「フィンランド労働組合中央組織」のイルッカ・カウコランタさんによると、政府は所定内労働時間を長くすることを提案し、労働者側も年24時間の延長を受け入れた。給与は増えず、実質的な賃下げだ。
ただ、一日の労働時間でみると長くなるのは約6分。カウコランタさんは「フィンランドの労働環境には歴史的な転換だが、日本とは大きな差がある」と語った。
日本でも注目される子育て支援制度は、女性の社会進出、男女平等を保障するため発展してきた。母親の育児休業のほか、「父親休業」、両親で分け合える「親休業」も。父親休業を3週間取る割合は約80%で、男性の育休取得率が2.65%の日本のはるか先を行く。
ヘルシンキに住む会社員、アレクシ・リンタ・カウッピラさん(32)は、昨年12月に生まれた長女ミイナちゃんのために父親休業に加え、生後4カ月のときに親休業を取り始めた。妻のエイラさん(33)は既に職場復帰し、約4カ月間、日中は1人で世話をする生活だ。「職場には理解があり、仕事にもいい影響があるはずだよ」と語る夫に、エイラさんは「誇らしいわ」と笑顔を浮かべた。
フィンランド社会に詳しい吉備国際大の高橋睦子教授(福祉政策論)によると、1950年代ごろからの工業化で女性も社会に出て働くようになり、70年代から子育て支援制度の整備や男性の育児・家事分担も進んだ。「仕事と家庭生活との両立には保育制度の充実に加え、残業を減らし休暇も確実に取れる働き方改革が不可欠だ」