いかにも19世紀のヨーロッパらしい色大理石の宮殿、じゃなかった待合室を抜けてプラットフォームへと進むと、そこには鉄骨とガラスで組み立てられた現代的な空間が広がっていた。何この大胆な展開は。重厚感のある石造りと、硬質で近代的な鉄骨&ガラス。アールが美しい曲線の優しさとすっきりとエッジの立った直線の潔さ。なんだか19世紀から20世紀へとタイムスリップしたような気がする。まるで時代を経て、継ぎ足してつくられたような設計だが、どちらも建築家ルイ・デラサンセリの設計によって一気に建てられたというからすごい。待合室の部分は宮廷文化を、ホームは産業革命を象徴しているといわれ、折衷様式の建築デザインは神々しささえ漂わせ「鉄道の大聖堂」と称えられているそうだ。
3層に重なったホームには、“ルージュトレイン”ことタリスをはじめ国際列車や近郊列車など、色とりどりの車両がひっきりなしに発着する。柱で垂直に区切られた空間は、まるで窓が開いているようで、なんだか“列車のショーウインドウ”を眺めている気分。ホームのすぐそばにはカフェやショップが並んだフロアは、“音鉄”にはたまらないだろう。
各フロアを結ぶモダンなエレベータもあるが、列車のすぐそばを行き来するエスカレーターが断然楽しい。上がったり下がったりを何度も繰り返していると、踊り場にあるスナックを売る屋台の青年が手招きする。ホットドッグやピッツァと並んで、生クリームやチョコレートソースをトッピングしたワッフルがあるのがベルギーらしい。