というわけで、行きもとっても便利なエアポートエクスプレスだが、そのありがたみをもっとも実感できるのはむしろ帰りだ、と個人的には思う。九龍駅と香港駅では「インタウン・チェックイン」というサービスを導入していて、主要なエアラインに搭乗するのであれば、駅でチェックインをしてスーツケースを預けられるのだ。そしてここがポイントだが、搭乗手続きをして荷物を手放してから、もう一度市内に出ることができるのだ。もちろん、すでにチェックインは完了しているので、カウンターに並ぶ時間を見込んで空港に早めに到着する必要もない。保安検査や出国手続きのための時間は必要だけれど、極端にいえばボーディングタイムに間に合えばいいわけだ。
利用者が多い時間帯なら10分間隔で出発していて、基本的には定時運行が見込めるのもありがたい。駅を出ればすぐ繁華街なので、「茶餐廳(チャーチャンテン)」と呼ばれる香港式の庶民派カフェレストランに入り、コーヒーと紅茶を混ぜた不思議な飲み物「鴛鴦茶(ユンヨンチャー)」といった香港らしいB級グルメを味わいつつ名残を惜しむのが私の楽しみ方だ。ちなみに、身軽さゆえに路面店でマンゴーシェイクなどを調達して車内に持ち込みたくなるが、エアポートエクスプレスの車内は飲食禁止なのでご注意を。
■取材協力:香港政府観光局
■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら