香港へはこれまで何度となく訪れているけれど「新界(ニューテリトリー)」と呼ばれる地域には、これまで足を伸ばしたことはなかった。なぜって香港では食べるべき、見るべき、買うべきものごとが多すぎて、ヴィクトリアハーバーを挟んで九龍半島と香港島を行き来するだけで、いっぱいいっぱいになるのが常だからだ。
ところがここ最近、香港の料理人たちから立て続けに「新界」の名を耳にした。いわく、香港では経済発展に伴って食料のほぼすべてを輸入に依存するようになり、農業はすっかり衰退してしまっていた。ところが、安全で品質のよい食品を求める(つまり大陸から入ってくる食品が不安ということですね)動きとともに、郊外で土地にゆとりのある新界で農家が復活した。また、新界の開発が進むにつれ高層マンションの建設ラッシュが起こり、中心地で働く人のベッドタウンとして意識の高い人たちが暮らすようになった。そんな時代に敏感な住民のニーズに合わせて、最近では高品質な自然栽培の米や有機野菜を手がける進歩的な農家が増えているそうだ。新界の繁華街である「元朗(ユンロン)」には、話題のレストランやここでしか買えないお菓子などがあるという。