【江藤詩文の世界鉄道旅】ヒジャーズ・ヨルダン鉄道(3)知られざる“鉄道好き国家” あちこちに残る鉄道全盛期の記憶 (2/2ページ)

2016.3.6 18:00

なんだかやたらと絵になる分岐器だった

なんだかやたらと絵になる分岐器だった【拡大】

  • アラブの子どもの無邪気な人なつこさといったらたまらない
  • いまは使われていない駅舎
  • 駅舎の前に停まっていた貨物列車はいまにも動き出しそう
  • 国土のあちこちに線路が残る
  • なにげに「ヨルダン新国立博物館」のカオになってたり

 どこまでも広がる乾いた大地をクルマで走っていると、もはや使われなくなった廃線跡が、いきなり目に飛び込んでくる。国によっては廃線跡が公園になったり、ハイキングをしたり、次の役目を与えられる線路もあるけれど、こんなに荒涼とした大地に取り残されたら、いったいどうしたらよいのだろう。

 クルマがびゅんびゅん飛ばす舗装道路の脇に、いまは使われなくなったレンガ造りの駅舎が佇んでいた。壊されもせず、けれども誰からも見向きもされていない。

 ここにいたのは、野良犬と少年たちだけだ。子犬を守るために気性が荒くなっている母犬を刺激しないように、そっと足音を忍ばせて子どもたちが近づいてきた。「アッサラーム・アレイコム」。唯一覚えたアラビア語で話しかけると、たちまち相好を崩す。お兄ちゃんから順に6歳のムハンマド、5歳のウサマ、3歳のハムザは、動いている鉄道を見たことが一度もないそうだ。

 高速道路を走っていたときには「こっちの道はイエメン」なんていう衝撃的な標識も見かけた。この子たちが大人になるころには、白茶けた砂をまき上げながら、新型の列車がヨルダンを起点に、サウジアラビアやイエメン、パレスチナあたりをつないで走っているといいなと心から思う。

取材協力:JICAヨルダン事務所

■江藤詩文(えとう・しふみ) 旅のあるライフスタイルを愛するフリーライター。スローな時間の流れを楽しむ鉄道、その土地の風土や人に育まれた食、歴史に裏打ちされた文化などを体感するラグジュアリーな旅のスタイルを提案。趣味は、旅や食に関する本を集めることと民族衣装によるコスプレ。現在、朝日新聞デジタルで旅コラム「世界美食紀行」を連載中。ブログはこちら

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