ちなみに、Aさんはがん保険など民間保険には加入していなかった。健康には自信があったからだが、まさか自分たちの生活がこんな風に一変してしまうとは想像だにしていなかったという。
Aさんは、なんとか復職して年収もある程度元の水準に戻った。ところが、5年後に肝臓に転移が見つかり、1000万円もの金融資産は5年で底をついた。今後、会社を辞めざるを得なくなったときのことを考えると、治療どころではないという。
「まさか自分が……」で人生プラン崩壊
「中年破綻」の原因はさまざまだが、そのうちの1つがAさんのようなケース。
40代・50代といった、子どもの教育費や住宅ローンの負担が重い時期に、病気や介護、リストラなどによって収入が減少もしくは途絶えてしまう場合である。「まさか自分が……」。それが起きた途端、人生のマネー設計はガラガラと崩れ去るのだ。
特に教育費は、家計のなかでも“聖域”視されがちで、ほかの費用を節約しても子どもや教育にはお金をかけたいと望む親は少なくない。だが、残念なことに過剰な期待をした結果、ひきこもりやニート、うつ病などになるお子さんもまた少なくない。
病気、リストラ、子どもの引きこもり……。中年破綻は、今そこにあるのだ。
(ファイナンシャルプランナー 黒田尚子=文)(PRESIDENT Online)