デンマーク、シンガポール、アメリカなども民間企業にマイナンバーを公開している。ただ、利用範囲を拡大すればリスクも高くなる。共通度が高いほど不正使用の可能性が大きくなるからだ。実際、アメリカでは住民登録番号を盗んだ他人が本人になりすましてクレジットカードで買い物するなどの犯罪が多発し、年間数兆円の被害が出ているという。そのためオーストリアでは民間への公開には本人の同意が必要だし、フランスやドイツは民間利用そのものを禁じている。マイナンバー後発国の日本では諸外国の先例を参考に不正利用に対する安全網を何重にも構築すべきだろう。
ルール違反が露見
マイナンバー制度は不正利用のほかにも負の側面が懸念されている。
法律に従ってきちんと税金や社会保険料を納めている法人や個人は利便性が高まるが、そうでない人はそれまでの不正や間違いが露見してしまう。本業以外に副業で収入を得ているものの所得税を納めていない個人だけの話ではない。売り上げ不振などを理由に厚生年金や社会保険に加入していない中小・零細企業も同じだ。マイナンバーでそうした未納入業者の社名や所在地が明らかになれば、当局は未納分の徴収を一斉に始めるだろう。