名称変更とともにスタッフを増員するなどストレス全般を取り扱う態勢を整えたが、とくに効果が期待されるのが慢性頭痛の治療になる。同クリニックによると、FDAのほか英国でも既に偏頭痛、筋緊張性頭痛などについて、TMS治療が認可されているという。
川口院長は「脳への刺激が痛み改善につながることはなかなか理解しにくいと思います」と断ったうえで、「身体に炎症を起こしていたり、怪我をしていたら痛いのは当たり前ですが、治ってからも痛みを感じるのは幻の痛みなのです。痛みの恐怖に対する記憶が作り出したともいえます」と説明する。
慢性疼痛を訴える患者の脳を調べてみたところ、大脳にある背外側前頭前野の体積が減少していたという研究結果があり、慢性疼痛が治った後に体積が元に戻っていたという。前頭前野は思考、創造性、認知、情動にかかわる脳の重要部位である。
「脳との相関関係が分かっても、直接的なエビデンス(証拠)はありません。医学の中でまだ解明されていないのは脳だけなのです。そして、脳のメカニズムが解明されていない以上、TMS装置で刺激を与えて反応を診ていく治療はとても合理的で、メカニズムの解明にも寄与します」と川口院長は治療の意義と可能性を強調した。