「道場に行ってみよう」と思い立ったのは退院から約1カ月後のことです。その少し前にリハビリで水中歩行も始めていました。リングの上で大の字になり、「やっぱり俺の帰ってくる場所はここだ」。道場の蒸し暑さが心地よかったですね。
前向きになったものの、復帰にはいくつものハードルがありました。その一つが食事。筋肉を増やすにはタンパク質の摂取が不可欠なのですが、腎臓に負担がかかる。低タンパク高脂肪の食事から始め、少しずつタンパク質を多くしていきました。
翌年1月にひざの古傷をクリーニング手術し、医師の許可を得て、復帰へ向けたトレーニングを再開しました。検査の数値をにらみながら腎臓に負担の少ない方法を模索する。前例のない挑戦でしたが、「もう一度、ファンの待つリングへ」という思いを支えに体をつくり、実戦練習を重ねました。