何年もアフリカで粘り強く仕事をしてきた日本人の専門家からそのような話を聞かされると、くじけてしまいそうになる。もはや物など売っても利益にならないというナイロビ支店長。立ちはだかる高い壁を認識しながらも、懸命にビジネスのタネを探し続ける大輝。心のノートに刻まれていく言葉の数々。大自然、観光、携帯電話、情報システム、お洒落(しゃれ)…。ところが、感染症にかかり、治療のためロンドンに行くことに。そこで、「物じゃない何か」と出合う。そして、ついに周囲を驚かせるような斬新なアイデアが! 現地のことなどまったく分かっていなかった若者が少しずつ、アフリカの現実のなかでたくましく成長していく。
頭でっかちで行動が伴わない日本人が多いなか、将来を託せる前向きな若者の姿を大輝に投影させているのか!
著者の松村は現役の国際開発コンサルタント。現場で得られた多くのディテールが縦横にちりばめられ、一大絵巻に仕立てあげられている。(中央公論新社・1785円)
評・堺憲一(東京経済大教授)