その頭山の活躍を通じて、当時の日本人が何を考えていたのかが浮き彫りになる。たとえばルソーの社会契約論を日本に紹介した中江兆民との交流。戦後、GHQ(連合国軍総司令部)から右翼の源流とレッテルを貼られた頭山と、左翼の代表格のように扱われる中江は生涯親友であった。右翼でも左翼でもない、まだそんな概念が定着していなかった時代に、素朴に国を愛し、子孫の未来を思っていた。
著者は6年後の東京五輪が国家の大目標のように騒いでいる政治家を「近視眼的」と批判する。本書に登場する明治の国士たちは100年後の国家、子孫のことを考えていた。いま、日本人が思い出さなくてはいけない歴史である。(小林よしのり著/小学館・1890円)
小学館 サピオ編集部 中澤廉平