「ボウリング」団塊世代に人気再び 健康維持、仲間づくり…そして安価
1970年代に国民的スポーツとして一大ブームとなったボウリング。今では人気が低迷しているが、シニア層の競技人口はこの10年で40万人以上も急増している。青春時代にブームの洗礼を受けた団塊世代が再び集い、健康づくりや社交の場として活用し始めたためだ。(日野稚子)
肩こり防止も
9月30日夕方。千葉県船橋市のボウリング場「ストライカーズ西船ボウル」に年配の男女9人が集まった。「健康ボウリング教室」を受講するためだ。
支配人の藤井浩一さんが9人に声を掛ける。
「腕は後ろから前に振り切るんです。手首じゃなくて腕の振り、ですよ。では、がんばっていきましょう!」
初心者向けのこの教室は今年6年目。参加者は年々増えているという。全6回(週1回)のコースで、各回とも投球練習の後、3ゲームを楽しむ。
藤井さんは「全身を使った緩やかな有酸素運動なのでシニア層には親しみやすい」と説明する。座席から投球する場所まで往復すると、1回の参加で計約800メートルを歩いた計算になる。
投球時に腕を振る動作は肩こり防止になり、足腰も鍛えられるため、楽しみながら健康づくりを行える。
健康維持のため教室に参加したという鈴木郁夫さん(61)=千葉県=は「体力にはあまり自信がないが、いろんな人と関わりながら今後の生活に取り入れていきたい」と話した。
155万人に増加
ボウリングは70年代初め、世代を超えて手軽に楽しめるスポーツとしてブームとなった。女子プロボウラーの中山律子さんらの登場で人気はさらに加熱し、競技人口はぐんぐん伸びた。しかし、その後は人気低迷の時代を迎える。
危機感を強めたボウリング界が目を向けたのは、シニア層だった。潜在需要を掘り起こそうとシニア層向けに入門教室を開いたり、クラブを結成したりと工夫を重ねた。
笹川スポーツ財団の調査によると、20歳以上の競技人口の推計は、平成16年が1667万人だったのに対し、26年には1038万人まで減った。そうした中、ボウリングを年1回以上プレーしたというシニア層(60歳以上)は16年の112万人から、26年は155万人にまで増加している。
安くて手軽に
「すごい!」
ストライカーズ西船ボウルで開かれた教室の参加者らは、打ち解けた様子でプレーを楽しみ、ストライクが出ると歓声を上げていた。ボウリングは仲間づくりの“社交場”でもある。
2年前から教室を開催している「ラウンドワン」(大阪府堺市)では10月、9割に当たる102店舗で教室を実施する。担当者は「健康スポーツとして利用する中高年が増えてきた。大人数でプレーするためコミュニケーションの手段にもなる」と話す。
フィットネスクラブやゴルフなど競合する娯楽も多いが、ボウリングは1ゲーム当たり数百円と安価で、数は減ってもまだ市街地に多く、ルールも簡単。「安い」「近い」「手軽」と三拍子そろった趣味として、受け入れられやすいようだ。
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