世界的サイバー攻撃が「低レベル」なのは本当か 事件から見えるサイバーセキュリティの現状 (7/7ページ)

 ハッキングなどが難しいと言われるiPhoneのゼロデイぜい弱性に至っては、FBI(米連邦捜査局)がテロ事件の捜査で犯人が使っていたiPhoneに侵入するために、100万ドル近くを支払って購入したことが判明している。

 あなたのPCは大丈夫か

 こう見ると分かる通り、今回の世界的サイバー攻撃の裏には、米NSAのサイバー兵器が存在する。もっと言うと、NSAがマイクロソフトなどメーカーに報告することなく隠しもっている「ゼロデイぜい弱性」が元凶だともいえる。

 シャドウブローカーズは今回のサイバー攻撃に使われた以外の、NSAのサイバー武器をいくつかすでに暴露している。ただ、NSAが使っているそれ以外のサイバー武器も数多く保有していると見られており、これからそれらが次々と暴露される可能性もある。そうなると、きっと今回のようにそこで使われるぜい弱性を悪用しようとする輩が出るだろう。そうした武器で被害に遭わないように、私たちができることは、自分のコンピュータシステムを常にアップデートして最新状態にし、データのバックアップも怠ってはいけない。

 さもないと、あなたのPCが次のランサムウェアによってある日突然使えなくなってしまうかもしれない。

■筆者プロフィール:山田敏弘

 ノンフィクション作家・ジャーナリスト。講談社、ロイター通信社、ニューズウィーク日本版に勤務後、米マサチューセッツ工科大学(MIT)でフルブライト研究員を経てフリーに。

 国際情勢や社会問題、サイバー安全保障を中心に国内外で取材・執筆を行い、訳書に『黒いワールドカップ』(講談社)など、著書に『ゼロデイ 米中露サイバー戦争が世界を破壊する』(文藝春秋)『モンスター 暗躍する次のアルカイダ』(中央公論新社)、『ハリウッド検視ファイル トーマス野口の遺言』(新潮社)がある。