伊藤忠出資が好機に
--大量培養の問題を解決した後も、ミドリムシの市場を開拓する必要があったでしょう。どうやって販売していったのですか
「起業翌年のライブドア事件でほとんどの取引を失い、倒産の危機にも直面しました。500社以上にミドリムシを売り込みましたが断られ、やっと伊藤忠商事の担当者にミドリムシの新しさをチャンスと受け取ってもらえました。伊藤忠からは研究開発費の出資を受けましたが、それだけではなく、日本全国8000カ所以上のファミリーマートへの販売網を得ることができました」
--その投資によって他のチャンスも生まれたでしょうね
「はい。伊藤忠グループのためだけに多くの商品をつくるようにもなりました。しかし、伊藤忠が出資者および販売パートナーであることによって、他の企業にもミドリムシを売り込むことが容易になりました。以前はミドリムシを懐疑的に見ていた企業も伊藤忠とのパートナーシップの成功を知って、私たちの生産したミドリムシを自社の製品に取り入れることを検討してくれるようになりました」
--日米のスタートアップの成長軌道を比較すると、日本のスタートアップの方が米国のそれよりずっと早くIPO(新規株式公開)を実現します。12年にマザーズに上場したときは、毎年50%の成長を続けるまだ若い企業でしたね。米国のスタートアップの多くはそのような状況では上場を望みません。なぜ株式公開に踏み切ったのですか
「理由の一つは、東大発ベンチャーとして初めての上場を果たす創業者になりたかったからです。05年に創業した大学発のベンチャー企業は1773社。そのほとんどが失敗しました。もう一つ、この決定の重要な側面は製品の売り込みが容易になるだろうということでした。実際、上場から2年後に東京証券取引所第1部に市場変更すると、それまでとは比べ物にならないほど効率的に大企業や政府系の顧客に製品を売り込めるようになりました」