これらの事態は、過去にも数多く経験しているはずである。想定外の事態が生じれば、投資回収計画はすぐに頓挫する。海外への事業展開では、半年遅れや一年遅れは、日常茶飯事である。それだから、投資判断は悲観シナリオを前提にして行うと良い。もっとも、よくないことばかりが起こるわけではない。想定外の神風が吹くこともあるのが経営だからだ。
日本企業に共通する「撤退が苦手」
上述したような手順を踏み、慎重な検討の結果、投資が決まったとしよう。しかし、シナリオどおりに物事が進むわけでない。次々と災難が降りかかってくることもある。このような場合に問題となるのが、「撤退が苦手」という日本企業に共通する弱点である。止める勇気、換言すれば、「勇気ある撤退」「良い意味での朝令暮改」ができない傾向がある。
撤退が遅れた例は数多い。パナソニックのプラズマ事業や東芝のウエスティングハウスと原子力事業が典型例である。また、自動車関連ビジネスに進出したオムロンやパナソニックは、低収益性に苦しんでいると推察される。家電企業のスマートフォンビジネスやPC事業は、間違いなく採算割れを起こしているが、なかなか撤退ができていない。
一方、撤退をスピーディに実施している企業も存在する。イオンは、採算面で苦戦している店舗を次々と閉鎖する一方で、郊外型の大型ショッピングセンターであるイオンモールの開発を進めている。