「早期決断はビジネスの基本」なのに… なぜ日本企業は撤退を決められないのか (3/7ページ)

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 投資案は、トップマネジメント、あるいは、投資権限を有する事業部長によって発案される。つまり、何をしたいかは、すでに決まっているところから検討が始まっている。投資の経済性計算について、多くの教科書では、以下の4つのステップを踏んで意思決定が行われるとしている。

 ・経営課題の抽出

 ・経営課題を解決するための諸方策の検討

 ・特定の方策に関する複数の解決案(代替案)の作成

 ・代替案の比較(経済性評価と定性的判断)と採択する案の決定

 しかし、最初の3つ(場合によっては、4つともすべて)は、トップマネジメントらによって決まっていることが多い。代替案が作成されないこともある。円高が急速に進展したリーマンショック以降、多くの製造業は国内で生産を続けることでは収益性が悪化すると判断し、雪崩を打ったように海外での生産拠点確保を急いだ。つまり、海外で生産しなければならないという投資案は決まっていた。進出先は、労務費の高い欧米ではなくアジア諸国(特に中国)、工場立地は中国の場合は沿岸の経済特区、他のアジア諸国では、日本の総合商社が関与する工業団地という細部まで決まっていた。

 例えば、タイのアマタナコーン工業団地には、600社以上の企業が入居しているが、デンソー、ブリヂストン、ダイキン、旭硝子、 SONY、サイアム・トヨタ、 三菱電機、花王、サイアム・クボタ・トラクター、カルソニック・カンセイ、バンコク・コマツ、日野自動車、ジャトコ、三菱重工業、サイアム・日立、豊田合成(自動車部品)など日本を代表する企業で入居企業の60%以上を占めている。

外堀だけでなく、内堀までもが埋まった上で検討が始まる