「早期決断はビジネスの基本」なのに… なぜ日本企業は撤退を決められないのか (5/7ページ)

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 複数のシナリオを準備する

 投資の失敗を少しでも減少させたければ、いくつかの手を打つ必要があるだろう。何よりも大切なことは、投資案件に関する状況分析や採算性計算を担当する部署は、与えられた業務を粛々と遂行することである。トップマネジメントの意向に沿おうとする気遣いが「忖度」につながる。嘘で塗り固められた投資採算計算に基づく決定は、将来の経営悪化のリスクを大きくする。

 トップマネジメントが発想した投資案が、慎重な分析の結果、問題を抱えているという分析結果を得ても、それをもってトップマネジメントが投資案を断念する必要はない。かなりの困難があるとしても、トップマネジメントは、英断を下せばいいのである。数字は一人歩きする傾向があるので、重要な意思決定に関する数字については、その算定根拠と算定ルールを投資案に付記することも大切だろう。

 また、経営企画部等は、投資案について、複数のシナリオを準備し、どのシナリオを採用するかをトップマネジメントに委ねるという方法もある。例えば、楽観シナリオと悲観シナリオの2つを準備する場合について考えてみよう。この場合、これまでの水準レベルを楽観シナリオのレベルとすることが良い。何事もうまくいくという前提でのシナリオである。一方、悲観シナリオでは、投資に関わる許認可の遅れ、事業準備の遅延、設備稼働に関する諸問題、取引先に起因したプロジェクトの遅れなどを加味したものとする。

日本企業に共通する「撤退が苦手」