技術力と品質管理を誇った「ものづくり日本」の信頼がぐらついている。三菱自動車の燃費データ不正や、東洋ゴム工業の免震ゴム偽装など不祥事が相次ぎ、最近では日産自動車が完成車を無資格者に検査させて、116万台のリコールを届け出た。
神鋼でも昨年、グループ会社でステンレス鋼線をめぐる試験値の改竄が発覚し、再発防止策をまとめたばかりである。
10年ほど前、ホテルや百貨店、高級料亭などで、食材の産地偽装、消費期限・賞味期限切れ販売、客の食べ残しの使い回しなどが相次いだ。その前には輸入肉を国産牛と偽る事件もあった。
表向きはコンプライアンス(法令順守)を掲げながら、実際は「ばれなければ」の利益優先だった。消費者を裏切った食品業界は大きなダメージを受け、高級料亭は廃業に追い込まれた。
他業種とはいえ、神鋼は教訓にしなかったのか。いや、前述したように自社でも不祥事があったのだから、経験にも学ばなかったことになる。
現場では「納期に間に合わせなければならない」というプレッシャーや、「これくらいなら問題ない」との安易な判断があったようだが、言い訳にもなるまい。
「信用を獲得するには長い年月を要し、これを失墜するのは一瞬である。そして信用は金銭では買えない」
かつて食中毒事件を起こした乳業会社のトップが、涙ながらに従業員に訓示した言葉である。