□産経新聞論説委員・鹿間孝一
19世紀にドイツ統一を成し遂げ、「鉄血宰相」と呼ばれたオットー・フォン・ビスマルクの有名な言葉がある。
「愚者は経験に学び、賢者は歴史に学ぶ」
補足すると、ビスマルクは演説で「愚者だけが自分の経験から学ぶと信じている。私はむしろ、最初から自分の誤りを避けるため、他人の経験から学ぶのを好む」と語った。危機管理の要諦であろう。
企業、とりわけ製造業で不祥事が後を絶たない。経営陣は他社の失敗に学ばない「愚者」と言わざるを得ない。
金属大手の神戸製鋼所が、アルミや銅製品などの性能データを改竄(かいざん)していたことが明るみに出た。10年以上も前から、工場の幹部も黙認する組織ぐるみの不正が横行していた。
経済産業省に経緯を報告した川崎博也会長兼社長は「原因を究明し、再発防止策を立案する」としていたが、さらに主力の鉄鋼製品やグループ企業でも不正が確認され、納入先は約500社に拡大した。
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由々しき事態である。とくにアルミ製品は、自動車のボンネットや新幹線の台車部分など、軽量化を図るために幅広い分野で採用されている。国産ジェット機や宇宙ロケットにも使われている。
もし安全性に問題があれば、自動車の大規模なリコール(回収・無償修理)に発展する。同社の経営を揺るがしかねない。