ニトリは「カジュアル路線」を進めるために、徹底したコストダウンを図っている。同じ路線では、大塚家具は勝てないだろう。一方、路線変更で富裕層の顧客も取りこぼすようになっている。戦略仮説の誤りに気付いた時点で、プロの経営者ならば、過去の「お家騒動」などなかったかのように「しれっと」方針転換をして、勝久氏のやりかたのよいところを復活させるべきなのだろうと私は思う。
だが、会社説明資料を読むと、大塚家具の経営陣は逆を向いているようだ。ECサイトでの販売に力をいれ(本当にいい家具をECサイトで買う富裕層はいない)、店舗面積や人員を減らし固定費の適正化を進め(つまりコンシェルジュ的な店員はますます減り)、アウトレットのような新業態を積極開店している(安いのはうれしいが、富裕層が求めるのは「価格」より「ほしい家具かどうか」だ)。
大塚家具には、まだ富裕層を満足させるだけの豊かな品ぞろえがある。だからひとこと言っておきたい。「方針を変えるか、それか社長を替えたほうがいいですよ」と。
鈴木 貴博(すずき・たかひろ)
経営コンサルタント
1962年生まれ。東京大学工学部卒業。ボストンコンサルティンググループなどを経て2003年に独立。過去20年にわたり大手人材企業のコンサルティングプロジェクトに従事。人工知能がもたらす「仕事消滅」の問題と関わるようになる。著書に『アマゾンのロングテールは、二度笑う』(講談社)、『戦略思考トレーニング』シリーズ(日本経済新聞出版社)などがある。
( 経営コンサルタント 鈴木 貴博 写真=ロイター/アフロ)(PRESIDENT Online)