簡単に言えば、ニトリと競合する郊外大型店は来店件数が半分に落ちている。主力の商業立地路面店の来店件数は増えているのだが、経営陣によれば来店成約率が落ちているという。つまりニトリと競合する顧客セグメントやエリアでは勝てず、一方で主力店舗では来店客が増えたのだが、販売員によるクロージングが甘くなってしまい売り上げは逆に減っているわけだ。
要は「戦略仮説」が間違っていた
これは企業経営にはよくあることで、要は「戦略仮説」が間違っていたのだ。競合企業をニトリやイケアだと考え、「競争に負けているから成長できないのだ」という仮説をたてた。そして、より大きい市場を取り込もうと、接客スタイルや商品において「カジュアル化」を推し進めた。
しかし大塚家具の競争相手はニトリではなかったのだ。ニトリは大衆消費者の圧倒的な支持を得て成長したが、大塚家具の顧客層はそこではなかったというわけだ。
大塚家具の主力顧客は、私が知っている限りふたつある。ひとつが「新婚家庭の背伸び買い」。もうひとつが「富裕層の高級家具購入」。どちらもニトリとは直接競合するわけではない。
私は過去に大きな買い物という意味では2回、大塚家具を利用した経験がある。一度目は新婚のとき。出身地である名古屋の習慣に沿って、高額な婚礼家具を購入した際だ。ある水準を超える家具を一覧しながら探すには、大塚家具はとても便利な店だった。