品ぞろえは最高だったのに… 富裕層に見放された大塚家具、新戦略は「すべて裏目に」 (4/6ページ)

 購入した商品は、「熟練の職人が作った」という現代風の桐たんすだ。とても精巧につくられているため、引き出しを閉めると別の引き出しが空気で押されてひょいと開いてしまう。販売員から「ここがウリなんですよ」と説明されて、納得して買ったことをおぼえている。これは、おそらく人生最初の大きな買い物で、たぶん大塚家具のように、販売員から背中を押されなければ購入しなかっただろう。これはペルソナ(ターゲット顧客セグメントにおける典型的な顧客行動)としては、大塚家具の主力セグメント顧客の行動とかなり合致しているはずだ。

 とにかく「いいもの」がそろっていた

 もう一回は、久美子社長が経営戦略を変更して直後のことだった。当時、『戦略思考トレーニング』という著作がシリーズ累計20万部というヒットになり、まとまった印税が入った。そこで家具をひとつ買い替えようということになった。

 数十万円の予算をたてて、銘木から作った一枚板ないしは二枚に開いた木目のテーブルを探した。お目当ては、ほかにはない「一点物」だった。

 まず、東京・自由が丘の手作り家具の工房に出掛け、手持ちのテーブル素材を見せてもらい、次に新宿の輸入家具店でテーブルの在庫を見せてもらった。どちらの店でも販売員がバックヤードから「掘り出しもの」を取り出してきて、美しい天然木の木目の手触りをアピールしてくれた。

 そして3件目に行ったのが新宿の大塚家具だった。受付では「店員をお付けしましょうか?」と聞かれ「いや、今日は下見なので自分で見ます」と答えたところ、天然木のテーブルのフロアを教えてもらい、自由に店内を見ることができた。

 大塚家具の品ぞろえは最高だった。天然木のテーブルは、端が木の表面のままの形になっているものが多く、その自然の造形を楽しむものなのだが、テーブルの形や木目の模様など、とにかく「いいもの」がそろっていた。

 ところが、結局、テーブルを買った店は、大塚家具を出て4件目に行った別の家具店だった。購入したのは、タモの天然木のテーブルだ。

来店数ではなく成約率に問題

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