しかし、今年はすでに鴻海のシャープ買収や中国・美的集団による東芝の白物家電事業買収があり、レコフによるとアジア企業による日本企業へのM&Aの総額は3月末までで5309億円と急拡大している。
早大ビジネススクールの長内厚准教授(経営戦略)は「日本企業の技術への過信と、アジア企業への偏見が、投資を呼び込む際の大きな壁になってきた」と指摘。「鴻海のシャープ支援が成功すれば、アジア企業が日本の中小企業にとどまらず、大手企業への出資や買収に乗り出すケースが増えるだろう」と予測する。
政府は20年の対内直接投資残高を35兆円に12年末から倍増させる目標を掲げる。技術流出などの懸念は根強いものの、少子化で国内市場が縮小する中、アジアを含めた海外企業の投資による雇用の維持や地域の活性化が欠かせないためだ。
ただ、鴻海の経営手法や企業文化を「新しい血」として取り入れて、シャープは再建できるか。
鴻海の郭台銘会長は2日の記者会見で、「文化が違うからこそうまくいく」と強調した。しかし、「業績を見て、従業員の3~5%に辞めてもらっている」(郭会長)という鴻海の厳しさは、従来のシャープにはない。