東京五輪が開催される2020年は宇宙業界の中で注目される2大イベントがある。一つは次世代の主力ロケット「H3」(仮称)の打ち上げ。もう一つは小惑星探査機「はやぶさ2」の帰還だ。群馬県伊勢崎市の宇宙・気象観測機器メーカー「明星電気」は、はやぶさ2の「目」となる装置を開発し、太陽系や生命の起源に迫る任務の重大な役割を担う。同社の競争力の源泉を探った。
◆はやぶさ2の「目」
はやぶさ2は「1999JU3」という小惑星を目指している。同惑星には有機物と「含水鉱物」と呼ばれる水を含んだ岩石があるとされており、同機の任務は惑星からサンプルを採取して帰還することだ。
このサンプルを分析することで、地球にある水や生命に必要な有機物の由来などの解明が進むことが期待されている。
サンプルの採取にあたり、はやぶさ2はまず、「インパクタ」と呼ばれる衝突体を惑星の表面にぶつけ、人工のクレーターを作る。
この際に、本体に影響が出ないよう、はやぶさ2はインパクタをぶつける表面の反対側に回り込むのだが、これでは衝突の様子を視覚的に捉えられない。そこで同社が開発を担当したのが理学観測分離カメラ「DCAM3」だ。
このカメラはインパクタが作動する際に宇宙空間に放出され、衝突時の様子を撮影する。カメラそのものの回収はできないが、撮影データを本体のはやぶさ2に送信する機能を備えているため、画像そのものは残るという仕組みだ。